白雲母 石さまざまより

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「世界の文学14 白百合を紅い薔薇に/石さまざま」 ケラー、道家忠道訳/シュティフター、手塚富雄、藤村宏訳。 中央公論社。

祖母と3人の孫が山で遊んでいたとき、とつぜん降ってきた雹(ひょう)から、機転を利かして守ってくれた娘、火事の時燃える家へ入ってとり残された男の子を助けた娘、物語の最後で「シュトゥーレ・ムーレが死んだの、高い岩が死んだの」と言って皆の前から姿を消した娘。この名前は、物語の最初、祖母と孫がこの娘に出会う前に祖母が孫に聞かせた伝説にでてきたもの。

善良な家族と野生児のような娘との美しく悲しい交流の物語。相変わらずのシュティフターの自然の猛威の描写は生々しくすばらしい。ここでは雹(ひょう)がふってきて森や家や畑を痛めつける様子。また日常の平凡な風景と生活の細かく描かれた描写の、科学的知識と伝統の知恵とを感じさせる巧みさ。

科学的分析力と庶民の生活へ温かい目を向ける優れた新聞記者のような巧みな文章と、そしてそこにある生活の美と幸福を詠う詩人のような詩情豊かな描写。
あまりに細かすぎてわかりにくいが、それらを支配する自然の法則、人の長い歴史から生まれた知恵が、じわりと体にしみこんでくる。

最初のシュトゥーレ・ムーレとは何者か、解説にはまったく書かれていないし、祖母が語る伝説とのかかわりにも触れらていない。インターネットで検索してもヒットしない。まったくもって不思議な物語。

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by teccyan1 | 2009-06-05 13:52 | | Comments(0)

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