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夜間飛行を読んで

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航空郵便の夜間飛行がまだ非常に危険な業務であった初期において、その使命と飛行士の危険性とが、航空郵便業務を成功させようとする管理者の心の内において、どのように整合性が保たれるか、安全な場所から指示する管理者や命をかけて飛ぶ飛行士の意義は何か、否定でもなく、すべてへの安易な肯定でもなく、事実と向き合ってきた作者の心の真実がたんたんと述べられる。

 この本の「序」で、アンドレ・ジッドは、管理者の、恐怖心という人間の欠点を克服させようとする態度や使命という義務の尊さに従属する強さに称賛を述べている。またヘッセはジッドへの手紙で、この本は、若者を金儲けの機械に奉仕するため、もしくは「技術」や「進歩」とか呼ばれている原始的な神に仕えさせるもので、自身はこの神を拒否する、と書いている。

 私はヘッセに賛同する。同時に、この文章が、意見こそ違うがこれら二人の作家に感銘をもたらせるほど優れており真実であることを思う。

Commented by てっちゃん at 2006-12-19 12:59 x
NHK「星の王子様、こころの旅路」を見る。
サンテグジュペリの生涯を紹介する。彼ははっきりと人間であるために責任を請け負わねばならないと言っている。それが戦争中、最前線の偵察に志願する行動となっている。
「夜間飛行」で描かれる、管理者の責任感はそのまま作者の価値観であることがわかる。
Commented by てっちゃん at 2006-12-20 20:53 x
「夜間飛行」すばらしさとヘッセの拒否の中で、釈然としないものが残った。もうひとつの作品「人間の土地」から人間の章を読む。
印象に残った箇所を以下にあげる。

 つまり、ぼくらは解放されたいのだ。つるはしをひと打ち打ち込む者は、自分のそのつるはしのひと打ちに、一つの意味があることを知りたく願う。しかも徒刑囚を侮辱する徒刑囚のつるはしのひと打ちは、探検者を偉大ならしむる探検者のつるはしのひと打ちとは、全然別のものだ。つるはしの打ち込まれる所に、必ずしも徒刑場が存在するわけではない。行為の中に醜さがあるのではない。それを打ちこむ者を、人間の協同体に結びつけもしなければ、また意味もなさないつるはしが打ちこまれる所にこそ、徒刑場は存在するのだ。
 しかもぼくらは、そのような徒刑場からのがれたい念願の者だ。
(「人間の土地」サンテグジュペリ/堀口大學訳/新潮文庫より)
by teccyan1 | 2006-12-17 08:52 | | Comments(2)

自分のこと、音楽のこと、本のこと。

by teccyan1
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